長唄 あやめ浴衣

2014-07-25

ドリーマーズ、美鈴です。

夏真っ盛りですね~

この時期にちょうどぴったりの「あやめ浴衣」という日本舞踊の曲をご紹介したいと思います

この曲は安政6年(今から約150年前)、5代目芳村伊三郎の襲名披露で発表された曲で夏を代表する長唄のひとつです。

着物に生地や柄で季節感があるように、日本舞踊にも詠まれた歌詞の背景などから、季節が表された踊りというのがあります。

この「あやめ浴衣」という曲は、飾り兜・雲の峯・河風・花あやめといった初夏を感じさせる言葉が詠まれていたり、隅田川で芸者が舟遊びをする光景を描いて、夏という季節感を表しています。

そして、この曲にはもうひとつ大きな特徴があります。

それは、歌詞に着物や染物に関する言葉がたくさん詠み込まれているところです。

例えば着物の文様で「宝尽くし」「貝づくし」などがあるのと同様に、「あやめ浴衣」はたくさんの「染め」の言葉が詠まれているので「染めづくし」とも呼ばれています。

これについては、この曲を発表した芳村伊三郎の襲名披露に、呉服屋のスポンサーがついたからではないかと言われています。
(昔は芳沢あやめという役者好みの浴衣を売るためのCMソングと言われていたそうですが、その後の研究で時代が違うことがわかったそうです)

 

それでは実際に歌詞を見てみましょう

 
長唄   菖蒲浴衣 (あやめゆかた)
安政六年(1859)五月 作詞 不明  作曲 二代目 杵屋勝三郎 三代目 杵屋正次郎

五月雨や 傘につけたる小人形 晋子が吟も目のあたり
己が換名を市中の 四方の諸君へ売り弘む 拙き業を身に重き

かざり兜の面影映す 皐月の鏡曇りなき
梛の二葉のゆかしさは 今日の晴着に風薫る 菖蒲浴衣の白襲ね 表は縹紫に
裏むらさきの朱奪ふ 紅もまた重ぬるとかや

それは端午の辻が花 五つ所紋の陰日向 暑さに〈二上り〉 つくる雲の峯
散らして果は筑波根の 遠山夕ぐれ茂り枝を 脱いで着替えの染浴衣 古代模様
よしながき 御所染め千弥 忍ぶ摺り 小太夫鹿の子 友禅の おぼろに船の

青すだれ 川風肌にしみじみと 汗に濡れたる晴れ浴衣
鬢のほつれを簪の 届かぬ愚痴も惚た同士
命と腕に堀切の 水に色ある 花あやめ 弾く三味線の糸柳

もつれを結ぶ盃の 行く末広の菖蒲酒 これ百薬の長なれや
めぐる盃数々も 酌めや酌め酌め尽きしなき
酒の泉の芳村と 栄うる家こそ目出度けれ

 

《染め物づくし》

辻が花・・絞り染めのひとつ
影日向・・文様染め表現の理論のひとつ。「陽当の中に翳を挿す贅沢な染色法」とのこと。
古代模様・・染模様のひとつ。花・鳥などを古風に描いた模様。
よしながき・・ここでは吉長染のこと。染模様のひとつ。
御所染・・絹染物
千弥・・千弥染[「中村千弥という歌舞伎俳優が着て流行した紫色の大絞り」
忍ぶ摺り・・擦込染めのひとつ
小太夫鹿の子・・伊藤小太夫という歌舞伎の女形が着て流行した鹿の子染め
友禅・・文様染のひとつ
おぼろ・・おぼろ染め「しぼり染めのひとつ」

 

と、たくさんの染めに関する言葉が詠まれているんです素敵でしょう

他にも、晴着、白襲ね、縹紫、五つ所紋など着物に関連した言葉もたくさんあって

表現の細やかさと巧みな言葉遊びに惚れ惚れしますね。

 

最後に・・・

 

去年踊ったあやめ浴衣のムービーです

お時間あればご覧くださいませ

 

 

それではまた~


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